昆布 智成さん
(昆布 智成さん)
”仕事も、生活も、工夫が大事”
そう語るのは、昆布屋孫兵衛17代目の昆布 智成さん。福井市出身で、大学進学以降、東京、フランス、と移り住み、菓子職人としての腕を磨き上げ、福井市にある実家のお店を継ぐためにUターン移住を決断。現在は、実家の昆布屋孫兵衛の17代目としてお店を継いでいる。東京と福井では、仕事を取り巻く環境が大きく差があると実感するも、工夫でその差を埋め、自分が作るお菓子を福井から全国に発信していくことを目標に、日本のお菓子業界をリードしていく存在でありたいと語ってくれた。
※ 本記事は取材当時の情報を基に作成しています。
福井に移住を決めたきっかけ
東京で20年以上雇われのシェフとして働いていましたが、いつかはオーナーとして独立したい、と考えていました。ただ同時に、自分にしかできないことをやりたいとも思うようになっていて。東京での独立は誰でもできるけど、故郷にある実家を継ぐということは、自分にしかできないのでは、と考え、実家のある福井市へのUターン移住を決めました。
移住すると決めた時の家族の反応
妻はそこまで積極的なわけではなかったですね。生まれも育ちも東京で、福井に知人・友人がいるわけでもないですし、子どもを通わせていた幼稚園のママ友などの繋がりもなくなってしまうわけなので。ただ、自分のやりたいことについてきて欲しいという思いを伝えて、ついてきてもらった、という感じです。
福井への印象
高校生まで福井にいましたが、その頃はあまり福井に対して思うことはなかったですね。当時は自分の感じている世界が当たり前、という感覚だったので、福井県が全国的にどの位置にいるのか、どう思われているのか、どんな伝統工芸があるのか、どういう特色があるのか、なんてことは全く考えていなかったですね。
ただ、東京やフランスでの生活を通して、県外から福井を見た時に、伝統工芸、和食、メガネや刃物など全国的に誇れるものがあることに気が付きました。これは福井にずっといたらわからなかったと思います。
移住前と移住後で変化したところ
家族の時間が増えたところですかね。東京の頃は通勤に1時間かかっていましたが、今は自宅とお店が一体になっているので、子どもが学校から帰ってきてもすぐに会うことできますし、通勤に使っていた時間をそのまま家族と過ごす時間に充てることが出来ています。
それから、東京では楽しめなかった車の運転も、福井では渋滞もなく走ることが出来るので、楽しむことができています。
車で3~40分走れば海や山があるのもいいですよね。いまだに山を見ると感動しますね。
福井での生活について
今年の4月に帰ってきたばかりで、すぐにお店の準備に取り掛かっていたので、今は仕事が9、生活が1、という感じです。なので、まだ福井の生活を楽しむ間もないという感じですね。今までの人生で、福井にいるより県外や海外で過ごした期間の方が長いので、懐かしさというより新天地に来たという感じです。
あとは、移住前と移住後の違いとして、スピード感は全然違うと感じています。それは仕事における自分のテンポであったり、物流であったり様々な場面で実感します。
ただ、そのスピード感も自分が周りを巻き込んで引っ張ることで何とかしようと工夫しています。これは、仕事も生活も同じだと思うんです。ダメだ、で終わらせるのではなく、自分の快適な環境にするために自分で工夫することが大事だと考えています。
移住者に向けたアドバイス
福井市は都会の喧騒みたいなものはなく、自然が豊かで、時間の流れもゆっくりしています。リモートワークなどで、もし働く場所を選ばないということであれば、福井市に来てみてもいいんじゃないかなと思います。夏は海水浴、冬はスキー、スノーボードといった季節ならではのアクティビティも簡単に楽しめますしね。
どこに移住しても、100%自分の納得がいくわけではないと思いますし、その不都合を楽しむくらいの気持ちでやっていけばいいと思います。
昆布智成さんにとっての福井
生まれ育った場所、ですかね。どういうわけか、240年続くこのお店の長男として生まれたので、そこは抗えないですね。
ただ、自分の生まれ育った場所だからこそ、もっともっと多くの人に福井にことを知ってもらいたいですね。
昆布屋孫兵衛
1782年(天明2年)創業の240年以上続く老舗和菓子店。昆布智成さんで17代目。2023年6月にアシェットデセールが食べられるお店としてリニューアルオープン。和菓子の商品販売とアシェットデセールのイートインを行っている。
(2023年6月にリニューアルした店舗の外観 )
(店内には様々なお菓子が並ぶ )