平塚 智司・依子さん 

「福井は家族の場所」

 今回お話を伺ったのは、東京から福井に移住した平塚 智司さん、依子さんご夫婦。智司さんは東京都出身で、依子さんは福井県出身。共に、東京で映像制作の仕事に従事し後に独立。子どもの小学校進学のタイミングで福井市に移住し、現在は自身で立ち上げた「kapta ptah合同会社」においてCM等の制作を手掛ける。先々の生活を検討した結果、福井への移住を決めたというお二人に福井での生活のことをお伺いした。

※ 本記事は取材当時の情報を基に作成しています。

福井に移住を決めたきっかけ

智司さん(以下、「智」とします):もともと、東京で住み続けていくことに対して、なんとなく「このままでいいんだろうか」と考えていました。特に子どもが生まれてからは、このままこの環境で育てていくことに対するイメージが出来なかったんです。それから移住を考え始めて、最初は東京の西部や、人が少ない地方などを中心に、様々な場所を探していました。

依子さん(以下、「依」とします)::私は上京した身なので、夫と同じように移住を考えてはいたものの、福井に戻るという考えはほぼありませんでした。ただ都心に近く特に人が多いエリアでの生活に疲弊しつつあり、もう少し落ち着いた場所に移りたいという思いが年々強くなっていました。その時期を同じくしておきた新型コロナ感染症が、本気で移住を考えるきっかけになりました。

智:新型コロナ感染症の流行によって働く場所を選ばないようになったことで、東京で住むことにこだわらなくても良くなり、妻の実家がある福井県への移住を決めました。

東京での生活に疑問を抱くようになったきっかけ

智:こんなにも人が一か所に集まっていてもいいのか、と常々感じていました。東京は人が多すぎると思うんですよね。

依:東京での住まいは大きな商店街の側だったのですが、人が多すぎて、文字通りまっすぐ歩くことも出来ない。常に他人が触れるくらいの距離にいるので、何をするにしても緊張感があり、すごくストレスになっていました。

智:それから、目や耳から入ってくる情報に消費を強要されることが多いなと感じるんです。その消費に追いつくことができればそれなりに生活は出来るんでしょうけど、一方で、その消費のスピードについていけないと、生活がしづらくなると感じていました。大げさに言うと、生き方まで強要される、といった感じで、何をするにも消費することを求められているような気がしていました。そういったこともあって、東京でこのまま生きていけるのかな、という不安を抱くようになりました。

福井での生活はどうか

智:福井にはまだ半年程度しか住んでいないので、まだまだこれからではありますが、移住してからの生活を振り返ると、東京での生活が本当にストレスだったのだなと改めて実感しました。福井ではそのストレスがないので、如何に東京の生活にプレッシャーを感じて、緊張していたのかというのがわかりましたね。

依:生活に関していうと、車のガソリン代など新たな出費は増えましたが、トータルで見ると生活費は減ったと思います。それから、野菜などの生鮮食品は意外と東京の方が安いのですが、美味しさが全然違うと感じますね。スーパーには美味しいお惣菜とかも多くて、それを利用すれば家計にも優しいし、調理の時間も短縮できます。

智:元からお酒を飲むほうでしたが、福井に来てから日本酒をよく飲むようになりましたね。

依:もちろん東京なら日本全国の日本酒が手に入りますが、どれを選ぼうか迷ってしまう。いまは近所で売っている地酒がどれも美味しいので、福井の地酒ばかり飲んでいます。

智:それから、蟹の食べ方を福井の人はみんなわかるんだな、というのが驚きでした。子どもの頃から慣れ親しんでいるからですかね。あと、魚の刺身が美味しいです。スーパーであのクオリティが買えるのが良いですね。

依:そうそう、福井の刺身は美味しいですね!東京だとスーパーで刺身を買うことはなかったです。

移住に対して不安はあったか

智:仕事に関する不安がありましたね。今は東京に事務所を残しつつ、テレワークで仕事が出来てはいますが、やはり度々仕事の関係で東京に行くことがあります。その際、移動手段としている北陸新幹線が遅延や運行停止などで東京に行けなくなったらどうしよう、という不安はありました。なので、東京・福井間の行き来に関しては様々な状況でのシミュレーションをしましたし、東京に行く際は必ず余裕を持って1日前には着くようにスケジュールを調整してます。

依:移住先の条件として、出来るだけ車を使わず過ごせる場所に住みたいと考えていました。ただ、地方出身の友人からは「車がないとダメだ」と言われていましたし、移住系のウェブサイトなどでも、車は必須だと書かれているのを何度も目にしました。ですが、福井市内は福鉄とえち鉄がある。極力車のない生活ができるのではないかと考えました。結果、土地探しに2年かけましたが、スーパーは目と鼻の先にあり、徒歩20分圏内に生活するのに必要な施設が揃っています。多少は車を使用することはあっても、自転車や徒歩で行くことも出来るので、今の生活に不便を感じることはありません。

移住前の福井市の印象

智:妻の実家がある勝山市には何度も行ったことがあります。その時の印象などをまとめると、「曇りが多い」ですね。(笑)移住する前に福井に遊びに来た時、福井駅までお義兄さんに迎えに来てもらったことがあります。駅に着いて曇り空を眺めていると、迎えに来たお義兄さんが「今日は天気が良いなぁ」と言っていたのには、驚きました。

福井市に移住して感じたこと

依:東京は子どもを出産する年齢が年々高くなってきていて、子どもを保育園に預けていた時の親御さんは殆ど自分と同年代でした。地方に行くと出産する年齢は若くなるという印象があったので、福井では自分はかなり年上かもなと思っていました。ですが実際は多子世帯が多いこともあり、親御さんの世代は幅広く、みなさんすごくエネルギッシュで元気ですね。しかも、福井の大人たちにはどこか余裕があって、あまりピリピリした人がいないと感じます。

智:それは私も同じことを感じていました。運動会や授業参観で交流する親御さんたちの所作や物言いなどにも余裕というか落ち着きを感じていました。

依:移住前の環境は、子どもに優しくないというのか、とにかくあれもダメ、これもダメ。見ず知らずの他人同士だから「人様に迷惑かけないようすべき」という価値観に、大人も子どももがんじがらめにされていると思います。こちらでも人に迷惑をかけない配慮はもちろん必要ですが、なんでもやってはダメと制限しすぎていない、好奇心が潰されない環境だと感じます。

福井の子育て環境について

依:子どもがしっかり子どもの時期を過ごせているのが良いなと思います。この前、近所の河川敷で、学生たちが地べたに座って楽しげに話しているのを見て感動しました。東京だと、フリーで安全な居場所が少ないので学生でもどこかのカフェに入るなど、まるで大人みたいな行動をとるしかないのですが、福井は、穏やかな風景の中で子どもが子どもらしく過ごせているのは素晴らしいと思います。また、児童クラブでの催しがとても充実していると思います。子どもにたくさんの経験をさせてくださっていて感謝しています。

智:子育ての環境に関しては本当に満点と言えると思います。少し行けば、海も山もあって自然の中で遊ばせることもできますし、博物館や美術館で文化的な体験もできます。子どもを連れていける場所が沢山あるのが良いですね。この前も、綺麗な石、面白い石を見にいこうと言って越前海岸に子どもを連れて行きました。

福井中央公園

(お子さんを連れて遊びに行った福井中央公園)

移住後の周囲の方との付き合い方

智:程良い距離感だと思います。移住前は、他所から来るということでいろいろと聞かれるのかなとか、ごみの出し方も言われたりするのかなと、構えていたところはあったんですけど、全くそんなことはありませんでした。むしろ皆さんからいろいろと優しく教えてもらっているくらいです。

依:後で知ったことですが、近所の方が「ここら辺は子どもが少なくなってしまったから、来てくれるのがありがたい」とおっしゃってくれていたそうです。周囲の皆さんの方から距離感を測っていただいているところだと思うので、私たちも徐々に知っていただけるように、馴染んでいけるようにしたいです

福井での生活における難しさや不便なところ

智:雪が降った時の生活ですかね。結構大変なんだろうとは思っています。やはり仕事に影響はあるでしょうね。でも、今のところ、福井ってこんなにも不便なことがないんだなと感じています。

依:自分たちで事業をやっている関係もあって、大手銀行の口座を持っていると少し使いづらさを感じますね。ただ、それを差し引いたとしても快適さが断然勝っています。

移住検討者に向けたアドバイス

依:住居の環境はすごく重要だと思うので、気になる場所は直に見に行き、できれば徒歩で周辺を見て回るほうが良いと思います。私も自分の目で確認するために、3時間しか滞在時間がとれなかったとしても福井に来ていました。

智:例えば、広報誌を見てみると良いかもしれないです。地域で行われる各種イベント情報などが載っているので、移住した後の生活を想像しやすくなると思います。

平塚さんご夫婦にとっての福井

智:家族の場所、ですかね。福井は、子どもを育てることを念頭に移住を考えて選んだ移住先ですし、妻の実家も近くにあるので、私にとっては、家族の場所という印象です。

依:子どもには、どうしてここで育ったのか、育った場所に意味を持たせてあげたかったんです。

智:そうそう、東京での住まいがあった地域は、私にとっても妻にとっても特に縁はない場所だったので、土地と人(自分)との繋がりがない、と感じていました。どうしてその土地に住んでいるのかと言われても説明が出来ない、そんなイメージです。でも福井には、妻の実家もあり親戚もいて、その存在が子どもに「福井は帰ってこられる場所」という安心感と、「だからここに住んでいるのだ」という、福井という土地と自分との繋がりを与えてあげられると思っています。

依:私にとって福井は生まれ故郷ではあるのですが、高校卒業と同時に上京し向こうの方がよほど長くなってしまいました。今は新鮮な気持ちで福井を感じています。都会に憧れて上京しましたが、経験を重ねてみると、実は東京で得られることは福井でも得られる。東京と同じか、もしくはそれ以上のものだって得られるということに気が付きました。福井のポテンシャルはとても高いと思います。

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