髙橋 要さん
(髙橋 要さん)
「福井市は挑戦させてくれるまち」
福井市に移住して9年目、福井市特産品の越前水仙の魅力を発信する合同会社ノカテ代表社員を務める髙橋要さん。山形県米沢市出身で、大学院修了後、新潟県長岡市の木沢集落で1年間生活しながら地域づくりを学ぶ「にいがたイナカレッジ」に参加。その後京都で青少年支援の仕事に従事し、2015年10月に福井市の殿下(でんが)地区に移住。当時、福井市では2例目となる地域おこし協力隊に任命された。現在は「越前海岸盛り上げ隊」の一員も務めながら、福井市のまちづくりに携わる髙橋さんにお話を伺った。
福井に移住を決めたきっかけ
大学院時代に参加した木沢集落での生活や京都での仕事の経験を経て、これからの人生で自分が本当にやりたいことは何か、と考えた時に”地域の中に身を置きながら生計を立てていく”そういう暮らしを実現したいと思ったことがきっかけですね。もともとは教員を目指していたけれど、大学では地域おこしについても同時に学んでいて、地域に関わることを仕事にしたいと相談した相手が、たまたま殿下地区とつながりがあり、地区のキーマンとなる人を紹介してもらえたのが、今住んでいる殿下地区との最初の出会いでした。
殿下地区は(人口や高齢化率など)数字で見ると大変な状況ではあるけど、そういう状況下でも地域で頑張っている人達を見て、何か一緒にやれそうだなと思えて。それで、殿下地区に行こうと決めました。なので、福井市へ移住というより、殿下がたまたま福井市にあった、という感覚ですね。それまで福井市に住むなんて全く考えてもいなかったし、そもそも、福井市どころか福井県についても知らなかったというのが正直なところです。福井市に来ることは本当にたまたま。でも、福井市という街自体にはいろんな面白さがあるというのは感じていましたね。
移住に対する不安はあったか
移住に対する不安はなかったです。これまでも新潟や京都に住んでいましたし、仕事も地域おこし協力隊の給与があったので、生活に関する不安はそこまで感じていなかったです。(移住した)2015年は、福井市の市街地の方でコワーキングスペースが出来たり、ゲストハウスSAMMIE’Sが出来たりと、ちょうど福井でいろいろな活動が始まった年でした。コワーキングもゲストハウスも人が出会う場所。だから、そういった場所での人との出会いを楽しみにしていました。
殿下地区に移住して感じたこと
気質の違いは感じますね。福井は関西っぽい気質があって、殿下は特におばあちゃんが元気なイメージがあります。殿下地区は人との距離感が近い方で、その距離感が時に地域のセーフティネットを担っているのかもしれません。僕が来る前、殿下地区では東日本大震災の被災者を受け入れるための場所として、地区内にあった空き家を人が住めるような状態で管理していました。しかも1棟だけではなく何棟も。その後、殿下地区に移住者を呼び込むために、と目的は変遷していき、実際に管理されていた空き家に僕も住まわせてもらっていて、残りの空き家も移住者で埋まっています。福井という地方の中にある一つの地域が、一つの目的のために一丸となって取り組んでいるってなかなかレアだと思いますし、新しい人を迎え入れることに非常に寛容な地区なんだと感じます。顔の見える規模間の地域だから、余計に人を大事にするという感覚があるのかもしれません。
殿下地区は市街地から車で30分はかかりますし、雪が降ってきたらもっと時間はかかる。大雨で土砂崩れが発生したら、陸の孤島になりかねない。そういう不便さ、リスクはあります。買い物もAmazonは午前中に届かないし(笑)でも、慣れてしまえば、それが当たり前の世界になるから、そういうものだと思えば、殿下での生活はそこまで不便とは思わないですね。
自身の今後について
僕にとって殿下地区はかけがえのない場所。もし今後、仕事で福井市内に行くことが多くなっても、殿下地区に家は残しつつ福井市内との2拠点生活をすることを選ぶと思います。それから、今自分が享受している地域からの恩恵を若い人に共有したいんです。自分が代表社員を務める合同会社ノカテでは、インターンで若い人に来てもらったりなど、自分たちの次の世代を殿下地区のような中山間地域と繋げようと活動しているところです。
移住者に向けたアドバイス
移住に迷ったときに背中を押してくれるのは、ご縁とかつながりだと思っています。例えば、自分だったら殿下地区で出会えた人達とか。「この人達がいるのであれば、楽しい暮らしができそうだな」って思えるような体験が出来れば、それがご縁になると思います。だから、実際にその場所に行ってみて、自分の肌で現地の空気感などを確かめてみるのも良いと思います。
髙橋要さんにとっての福井とは
福井は新しい挑戦を行う機会に溢れていて、活躍できる余白が多いと思います。以前、地域おこし協力隊にいた頃、全く経験のない僕にも編集やライターをやってみないか、と声がかかったことがあります。どちらかというと、能動的に活動を行うプレイヤーがそこまで多くはない地域なので、自発的に何か活動をしてみるとか存在感を出してみたりすると、いろんなところから声がかかると思います。そういった意味で、挑戦させてくれるまち、ですかね。