護国神社にあかりが灯る。6月夏至の頃、7000坪の広大な境内は、「小さな灯火」が「大きな結火」へと拡がり、「急流中底之柱」を伴って、天の河のごとき幻想的で神秘的な周りの風景に包み込まれる。 膨大な灯火を制作するのは、ラジオ体操や防災の結節点としての神社に集う、松本・春山・明新地区の熱心な親子たちである。
「急流中底之柱」は、橋本左内の座右の銘であり、激流の中でも倒れることのない揺るぎない心を表わしている。幻想的な夜景の中で、確乎たる力強さを心に秘め、平和と自然への感謝を祈る。最初の灯火からすでに10年を迎える、この揺るぎない親子と地域の双方のつながりに、熱いエールを贈り、希望のあかりをずっと灯し続けてゆかれることを願う。（講評　鈴木奈緒子）

福井市の北部、美術館や博物館が立ち並ぶ閑静なエリアに、広大な鎮守の杜が現われる。 この護国神社では、県内有数の広い境内地を活かして、10年前からこの行事を始めている。今ではどこでも見られるが、ここでは、この時点からずっと「平和と自然への感謝」の思いが大切にされてきたこと、そして、3つの小学校校区が合わさる場所に立つこの場所に各小学校の子供たちが集い、この行事が行なわれていること、この2つのことは高く評価されよう。 昨年境内に建立された、橋本左内にまつわる「急流中底之柱」も、この行事に一層の輝きを与えた。これからも末永く繋がっていて欲しい人と杜の風景である。（講評　中村潤一）

地域の人々が、地元の自然を活かした景観にさらに少しずつ手を加えながら、季節の花木や草花を植栽した空間。遊歩道や散策路の整備、清掃活動を地道に継続している努力が、単に美しく整備保全された公園とはどこか違うぬくもりを形成している。そしてその場所で経過した歴史や時代の流れを伝承しつつ、人々が集うことができる催事も行いながら、少しずつその良さを拡げて親しまれるような活動がとても素晴らしいことだと感じられる。過剰な装飾で、観光地化しすぎないことが望まれる。　

（講評　西畑 敏秀）

 フェニックス通りから東環状線に入ると「高桑印刷」が見える。外壁の白、階段の木、ファサードの開放的なガラス面といった、シンプルな色彩構成に素材のテクスチャーが活かされた清潔感溢れるキャンバス地を思わせる造りである。自然光と蛍光灯で構成された光環境は印刷物のデザインワークにふさわしく、正面階段を登り切って円状にくり抜かれた屋根から天空を眺めるよう誘うのも心憎い。周辺環境に配慮しつつクリエイティブなデザインを追求する熱い想いと暖かな優しさの感じられる建物である。（講評　加藤美子）

文京地区の閑静な住宅地に建つイタリアンレストラン。周囲は道路、底喰川に囲まれた角地に位置し、塀や建物外壁には越前海岸の原石、入口には芴谷石を使用されていて重量感たっぷりで、県産品の使用にも配慮が伺える。オーナーのこだわりは建物内外で多く見られ、庭には譲り受けた樹木等自然をこよなく愛している気持ちが表れている。着工から6年を要した“カシーナ”に一度行ってみたい気になるレストランである。（講評　歌門敬二）

閑静な住宅街の中に、ヨーロッパのどこかに迷い込んだような、外壁に自然石をふんだんに使用した洋風の建物、リストランテ カシーナが佇んでいる。外壁などには、越前海岸や、県内各地の自然石が使われていて、建物周りの樹木は、なるべく手をかけないようにと、自然樹形が保たれている。また、中庭には樹齢百年以上という大木があり、他の樹木、水、下草と静かな癒しの空間を見事に作り上げている。外観、中庭、そのエリア全体が、隣接した公園をも巻き込んで心地よい雰囲気をかもし出している。これは、ずっと大切にしていただきたい、街中に溶け込んだ自然な空間である。

（講評　中村潤一）